基本的に壁打ち

長文たち Twitter→hisame_tc

彼女の旅路、あるいは人生

Fate/GrandOrder -絶対魔獣戦線バビロニア-」Episode0、ご覧になりましたか?私はうっかり会社の昼休みに見て、昼にメインシナリオを進めるときにいつも駆け込んでいるパン屋さんでべしょべしょに泣きました。

この27分間が期間限定配信なんておかしい……いくらでも積むから買わせてほしい……というか本っっっっっ当にお願いだから全部アニメ化してくれませんか!!!??!?!????!???感情がはちゃめちゃなのでびっくりマークとはてなマークを連打してしまう……なんで……なんでや……ぜんぶアニメ化してくれ……たのむよ……6章と7章がはちゃめちゃにおもしろいのはわかる、私もそう思う、でも、でもさあ!!!!!冬木から北米まで全部おもしろいじゃん!!!!!!!!これまでの全部の旅路あってこそのさあああ~~~~~~それでこその、あの、あの旅の終わりなわけじゃん…………たのむよ…………順番前後してもなんでもいいしいくらでも待つしいくらでも積むから…………みんなの旅路を…………

 

1部、1.5部、2部、2部序のすべてに思いを馳せて大変なことになっており、種火を回るどころの騒ぎではなく、思い出すだけで涙目と鳥肌になりながら、ざかざかとこの文を書いています。色彩をそこで流し始めるのあまりにも……あまりにも……あの、本当に、構成が完璧すぎて、ねえ……ギャラハッドさん……あそこでギャラハッドさんを止めるマシュ、それこそがロマニの言う「人間らしさ」、ひとを思いやる心じゃないですか……!!!やっぱりギャラハッドさん、2部6章でマシュがまじでやばい感じになったときにマシュの体を借りてただ一回だけ共闘してほしい……口調は古風なかんじがいい……ギャラハッドさんはマシュとマスターを信じてすべてを託して眠ったのだけど、でも、たった一度だけマシュの体で、声で、「此度のみと心得よ」って言ってすらりと剣を抜いてほしい気持ちはさあ、あるじゃん……!!

 

さて、マシュとロマニの出会い、そしてFate/GrandOrderの前日譚として描かれたこの0話、メインシナリオをどこまで終えているかによって感想が変わる本当にものすごい構成だと強く思いました。1部未クリアなら7章の導入として、1部クリア済~2部未クリアなら今後この人々(クリプターたち)が出てくるんだなという示唆として、2部進行中ならマシュのこれまでとこれからの振り返りとして。我々にはあのラストとロマニの表情がどういうことか、全くの説明なしにでも、わかってしまうので…………

2部進行中のいま、この0話を見てどうしたって考えてしまうのは、彼女の旅はこれからも続くけれど、これからの旅は、ということじゃないですか。4章で描かれたマシュの誠実さはまぎれもない彼女のエゴで、それはある意味傲慢でもあって、誠実でありたくても善良でありたくても、どうしたってすべてを手にはできない私たちは何を選び何を切り捨てるのか、という……

2部オープニングを見てから事あるごとに言っていたのですが、2部になってマシュが戦う女の顔になっているんですよね。まっさらだった彼女が色彩を得て、感情を獲得して、覚悟に殉じたあとにもう一度いちから人生を歩みなおす、その先の表情。無垢であれ、善良であれと教育され、人間の良いところばかりを知ろうとするマシュは、自分は人間関係の外側にいる存在だと考えていたのだと思います。最初から自分は人間関係の当事者ではないと思っているから、他人と自分を比べないし、本来であれば辛く苦しく理不尽だと怒ったり恨んだりするべき境遇にあるのに、自分をただの無機物な対象として見るカルデア職員たちが笑い合う様子を心から嬉しそうに見つめている。

これまでのマシュの立ち位置は、一列に並び立つAチームの7人と、後ろからそれを見つめるマシュという構図に象徴されるものでした。そんなマシュにようやく自分を人間関係の当事者として認識させたのが、ロマニやダ・ヴィンチちゃんだったんですよね。そうして自分はただの第三者でも部外者でも、輪の外側にいる付随物でもなく、自分の人生の当事者であることを自覚し受け入れてはじめて、自分の考えや感情やほしいものを見つめることができるようになる。初めて自分にもほしいものがあることを自覚して、吹雪の窓辺で待っているだけだった夢は夢でなくなり、願いとなって、自分の生身のからだで生きるようになる。それでも彼女の生には限界があるままで、マシュはそれを受け入れたままで、そうして短い生を覚悟とともに駆け抜けてしまった。その覚悟は、本来年端もいかない普通の女の子が抱くようなものではないし、きっと抱いてはいけないものでもある。

旅のなかで見たもの、感じたこと、出会った人々、そういうすべてがようやく彼女の少女としての外郭をかたちづくり、その中に少女らしからぬ覚悟と聖女のような精神があり、そしてようやく、彼女は普通のひととして生まれなおす。1部は、そういう物語でした。

人間をかたちづくる様々なものを描いた1部、善悪どちらか一方だけではいられないことを突き付けた1.5部、そして人間とは、生きるとはということを問い直し、選択を迫る2部。2部は、あの旅のなかでようやくひととして生まれたマシュがひととして成長するための旅なのではないかなと思っています。そんな彼女が戦う女の顔になっているのが私は本当にうれしくて……わからないけれど、わからないままで彼女たちは進んでいくんですよね。ロマニに対して「すべての生命には、活動限界があります。わたしは、わたしの活動期間に疑問はありません」と無感動に言ったマシュが、異聞帯での旅の果てに、ただシンプルに「生きたい、生きていたい」と思うようになるのではないかと、そうなってほしいと私は思っているので……

 

見上げた花火に、視てしまった終わりが重なるロマニ・アーキマン、非常にしんどかったですね……ロマニにとってのひとらしさのなかに「意思を持って損ができる」があるのも、本当に、あの、終章………………マリスビリーとの会話のときのフードの後ろ姿を見て、2部オープニング!!!!という気持ちが爆発してしまったのですが、いや本当に、どうなるんだ……あれはやっぱり彼なんですか……

あとレフがさあ~~~~!!!!!!0話、本当に何がしんどいってレフが一番しんどかった。彼の心残り……終章感想文を読み返したら「終章最初にソロモン(ゲーティア)のマシュに対する『どこまでも平凡な人間だ』という評価が、マスターを守りきったマシュへの『きみは普通の女の子だったんだよ』に繋がるの、一度気づくとここめちゃくちゃ泣きますね……そう、普通の女の子だったし、レフはそんなことを当たり前のこととしてずっと知っていたんだよな……」て書いていたんですが、あの、まさに、これなんだよな!?!!?!?!?噛み締めるようなレフの「考えてみれば、それは我々にも言えることだ。当たり前のことだ。当たり前のことなんだよ、ロマニ」が本当に……本当にさあ……「我らが王は、人間を憐れみ、死という前提から救うと言った。私にはわからない。そうだろう、マシュ。本当に、人間にはそれだけの価値があるのかい」…………

 

色彩が流れ始めるタイミング、あまりにも完璧なんですよね。いつもと同じガラスの外側の吹雪、待つだけだった夢、動き始める物語、その幕開けの鐘のようなピアノ。本当に、見返すたびに鳥肌がやっっっっっばくて……!!!

f:id:tc832:20190809163003j:image

で、あの、走るマシュ、これ、「風が強く吹いている」の流星演出と同じやつじゃないですか!!!!!!!!!正確には流星たる彼ではなく10区のあれなんですけど……わかる、そう、マシュは流星なんだよな……1部のマシュの輝き、大気圏に飛び込んで一瞬燃え上がり煌々と輝いて燃え尽きえる流星のそれなんですよ…………ふと少女ダ・ヴィンチちゃんのプロフィール読んでいたら「作られた短命の生命ゆえの達観、客観性」とあってまたべしょべしょになってしまった。本当に、マシュ、2部の旅のあと、ただ生きていく人生へと踏み出してくれ…………

私は、英霊という人間としての先輩が、後輩たる今を生きる生身の人間たちに向ける祈りとエールが本当に好きなんですよ。毎回毎回たくさんグッときてしまう。で、こんなんさあああ~~~~~~~~なんで全部アニメでやってくれないんですか!!?!?!???!ダイジェストじゃなくてやってください本当に……たのむ…………全部見たい…………見たいにきまってるでしょ………

「何を好きになり、何を嫌いになり、何を尊いと思い、何を邪悪と思うか。それは、きみが決めることだ。僕たちは多くのものを知り、多くの景色を見る。そうやってきみの人生は充実していく。いいかい。きみが世界をつくるんじゃない、世界がきみをつくるんだ」

4周年CMの最後にアマデウスがお辞儀をするのめちゃくちゃいいなあと思っていたところ、これを見て、もう、もうね…………祈りなんだよ、みんながマシュにいろんなことを教えて、彼女の背中を押して、彼女の旅には出会いがたくさんあった代わりに別れもたくさんあったけれど、自分だけの人生を生きなさいとエールを送ってきた、そういう旅だった。そんなことを思って泣いていたところ、婦長の言葉がこれですよ……!!!!

f:id:tc832:20190809162921j:image

「ミス・マシュ。夢と願いは違うものです。限りなく現実をにらみ、数字を理解し、徹底的に戦ってこそ、願ったものへの道は開かれる。あなたは、あなたのために、これからの人生を生きなさい」

みんなだいたい表情が映るなか、婦長は後ろ姿なのが本当に、本当に、めちゃくちゃ良くてね!!?!?ナイチンゲール、彼女の信念は、言葉で語るものではなく見るものが彼女の姿勢から感じ取るものなんだよな。婦長本当に好き……だいすき…………

三蔵ちゃんの「あたしの行動に理屈はないの。やりたいようにやる、ううん、やるべきだと感じたことを、胸を張って信じているだけ。あなたも同じよ。きっと」に、「STAR DRIVER 輝きのタクト」の「やりたいこととやるべきことが一致したとき、世界の声が聞こえる」じゃん!!!!となってしまった。ラストもまさに「人生という冒険は続く」だし……

6章の映画も本当に楽しみですよね!!私は本当に6章のマップ音楽が一番好きで……0話、村でのみんなの宴会を描いてくれたのが本当にめちゃくちゃ良かった。ネロの言葉ともつながるのだけど、場所も為政者も国も名も違えど、根本にあるのはただ人々の日々の生活なんだよな。私たちはただ生きる、生きている、それだけで……そして、そういう根本の部分がゆらぐことで「人とは何か」「生きるとはどういうことか」ということを考えなければならないのが異聞帯じゃないですか。3章4章の感想文、そういう話をしようしようと思ううちに遅くなっており……5章までには書きたい……

ドレイク船長の「悪人が善行を為し、善人が悪行を為すこともある。それが人間だ。それがアタシたちだ」という言葉、今聞くとまたこう思うことが変わるのが、深いなあと思いました。善人と悪人・善行と悪行は連動するものではないんですよね。異聞帯を旅する彼女たちに、善悪という明確な指標はもはやない。正義と対立するのはまた別の正義、いや、そもそも「正義」といえるかどうかもわからない。やるべきことがわかっていた1部、やるべきこと以前にやるべきかどうかすらももう誰にもわからない2部。それでも彼女たちは進んでいくんですよね。そうしなければ生きていくことができないから。


「永遠などすこしもほしくはない」は、あのときのマシュにしか言えない言葉なのだと思います。

f:id:tc832:20190809162853j:image

だって、マシュはもう終わりに向かって生きているわけではないから。受け入れている終わりへと駆け抜けていくから、今という一瞬だけがあればいいと心から言えるけど、彼女はもう青空を見た、そして、「いまがずっと続けばいいのに」というその先の気持ちを知ってしまった。ルルハワで口にしたそれは、そういう感傷を抱くということは、確かにひととして成長している証です。ただ、彼女の旅路、あるいは人生が、あまりにも過酷であるだけで。それでも、彼女が見たいと願い、そして辿り着いた青空と同じようなうつくしいものが、この旅の先にもあることを、私は願ってやまないのです。

 

「本日、第七特異点へのレイシフトが実行されます。私は、また、旅に出るのです」