基本的に壁打ち

長文たち Twitter→hisame_tc

何度でも床は抜け金だらいは頭上に落ちる

君はもう、かんばまゆこ先生の「錦田警部はどろぼうがお好き」を読んだだろうか。

「けいどろ」こと当作品は、昨日今日において間違いなくどの作品をも上回る瞬間最大風速を記録した作品だ。

読んでいない君はいますぐKindleでぽちっとやるかサンデーの公式アプリ「サンデーうぇぶり」でぽちっとやって全話読んでほしい。うぇぶりは最初にフリーコインがたんまりもらえるので、なんとそのフリーコインだけで全話読めてしまう。そしてKindleでぽちっとやって2巻まで読み、そこで止まっている君。頼むからいますぐうぇぶりのかんばまゆこ劇場へ行き、15話と16話を読んでくれ。頼む!!!!!

錦田警部はどろぼうがお好き - かんばまゆこ - サンデーうぇぶり

https://www.sunday-webry.com/series/557

かんばまゆこ劇場 - かんばまゆこ - サンデーうぇぶり

https://www.sunday-webry.com/series/996 

 

はじめに、このブログはプレゼン記事ではない。けいどろが性癖に直撃して大爆発を起こした関係性オタクの魂の叫びである。プレゼンブログは数々の神が既に書いてくださっているので、プレゼンの折にはぜひそちらをご参照願いたい。

まだけいどろ履修済の世界線に至っていない諸兄は早く全話読み、そしてもし気が向いたら当記事に戻ってきてほしい。1時間もあれば、君もけいどろ履修済の世界に至ることができる。なぜなら、大っっっっっっ変残念なことに、けいどろは、16話までしかないから………………

しかし、逆に考えれば、長く見積もってもたったの1時間で君はけいどろを完全に履修することができるのだ。これはものすごいことではないだろうか。漫画を読んでいる1時間なんて実質一瞬だ。ぜひ読んでほしい。じわじわきたりひんひん笑ったりラブコメの波動にテンションが上がっていると不意打ちで死ぬ。けいどろはとんでもない作品である。

 

 

 

さて、私がこの記事を書くに至ったのは、ひとえに死んだ目警部の存在ゆえである。恋する中学生のような警部の姿ににこにこしたり噴き出したりしていたらいきなりとんでもない展開に殴られて私は宇宙に放り出されてしまった。

警部とアンリくんとジャックの3人で進んでいくんやな~と思っていたらとんでもなかった。実質4人だった……全話読んでから読み返すと1話の「内通者はハチの巣だ!!!」がまじでやばくて震える。ジャックに出会って恋する中学生になっても、この人の根っこの部分のヤバさは変わらないんだ……と思うとはちゃめちゃにヤバい。しかも何事にも興味ないくせに命令順守さえ守れば部下は命がけで守ってくれる。警部、いったい、何………………

私は関係性オタクなので、「君に出会うために生まれてきた」と同じくらい「君に出会うために生まれてきたわけでは断じてなかったのに」が好きだ。そういったどうしようもない遭遇によって否応なく運命が変わってしまう二人が好きだ。性癖に直撃したり、爆発直撃の余波で二次創作をしたりするのは圧倒的に後者の二人が多い。月刊ジャンプスクエアで絶賛連載中の「青の祓魔師」では志摩事変および島根イルミナティ編によって私の人生そのものが変わってしまったし、昨年10月の島根イルミナティ編の舞台はどうしてもどうしても行きたくて神社にお参りもした。今年の4月は主に「ゼロの執行人」にあって「純黒の悪夢」にないもの、「ゼロの執行人」になくて「純黒の悪夢」にあるものに思いを馳せているうちに終わった。

死んだ目警部がもたらしたのは、「アンリは『死んだ目の錦田』を知らない」 というとんでもない事実である。怪盗ジャックと出会ったことで目が輝きだし、退屈だった人生が動き出して以降の錦田のことしか知らない。定期的に警部はときめきやら衝撃で心臓が爆発し目が死んでしまうが、そうして目にする死んだ目の錦田はアンリにとってはあくまで暫定的な姿にすぎず、アンリにとっての錦田は、死んだ目モードを目にしてもなお、恋する中学生なのだ。そう、アンリは自らが変えた男のかつての姿を知らないのである!!!!!!

これはとんでもないことだ。我々が当初思い描いていた「アンリはジャックを前にするとぽんこつになってしまう錦田を知っているが錦田はアンリがジャックであることを知らない」という情報に不均衡がある関係という解釈は実は不完全で、実態は「錦田はアンリがジャックであることを知らないし、アンリはジャックと出会って以降の錦田しか知らない」というお互いに空白を抱えた、情報の不均衡さの均衡がとれた関係である、ということが明らかになってしまった。とんでもないことである。

私は芥川龍之介の「藪の中」が大好きだ。ツイッター青空文庫が話題になるたびにリンクを貼っているし、大抵こじらせると藪の中じゃん……と言い始める。「藪の中」はある事件に対する複数人の証言からなる短編なのだが、こちらもすぐに読める長さなのでぜひ読んでほしい。

青空文庫 藪の中 https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/card179.html

事実関係はひとつだけであるはずなのに、「真実」というものは主観という眼鏡を通せばいとも容易く変わりうる。あるのは事実関係・因果関係と各人の主観のみであり、たった一つの確かなものなんて、そんなものはどこにもない。不均衡のある関係はこの世に溢れており、互いに歩み寄ることなしに対等な関係というものを築くことは難しい。しかし、だからこそ人が誰かを大切にしたり、一緒にいようとすることは本当に素敵なことだなあと思っている。そこには、相手に対する思いやりや愛情がたしかにあるからだ。きっと私は、だから不完全さを不完全なままで大切に抱えながら対等な関係を築いている二人にどうしようもなく惹かれるのだろう。

話をけいどろに戻すが、死んだ目の錦田の存在が明らかになったことによって、錦田とアンリの関係性もまさにこのような関係であることが明らかになってしまった。しかもそういう関係だとわかっただけでなく、銃を向けられたジャックがあんな……あんな顔を……するなんて……!!!!!!!!性癖直撃大爆発の瞬間である。その瞬間、床が抜け、頭上に金だらいが落ちてきたかのような衝撃が私の体を駆け抜けた。「床が抜けて頭上に金だらいが落ちてくる」というのは何かにハマったことを観念するほどの衝撃が走ったときの私の常套句なのだが、まさにそれだった。そのとき橘に稲妻走る、である。

錦田はジャックに焦がれ、アンリを大切にする。アンリは錦田に自分を追わせてやっているようでいて、その実錦田の人生の大半を占める死んだ目の時代を何も知らないのだ。16話のアルバムのシーンの圧倒的致死量で私の心臓も止まってしまった。あまりにも、あまりにも完璧な関係性である。ありがとう………………!!!!!!!!!!

 

これは関係性オタク私の魂の叫びなので唐突に降谷零やFGOの話をするが、上記の「あるのは事実関係と主観のみで、たった一つの確かなものなんてどこにもない」という性癖をこじらせ続けた結果、2018年4月に「ゼロの執行人」と「Cosmos in the Lostbelt」のベン図が重なるというまさかの事態が起きてしまった。結局同じひとりの人間の性癖なのですべての沼は繋がっており、それらの性癖はこれまでに触れた人や作品や出来事によってかたちづくられる。当然のことといえば当然だ。

私はドラマも好きなので毎クール数本は見ているのだが、恋愛が題材になっている作品に関してはピンとくる/こないがかなりはっきり分かれる。「スラムダンク」と「鋼の錬金術師」に育てられ、「BLEACH」→「NARUTO」→「ONE PIECE」という王道ルートを経て少年漫画にすっかりはまりながら生きてきたので、人格形成や性癖に影響を与えた少女漫画は「カードキャプターさくら」「ハチミツとクローバー」「坂道のアポロン」「夏目友人帳」等々、いわゆる恋愛題材ものとは少し毛色の違うラインナップのように思う。

妄想や二次創作においても大抵恋愛色のうすい、あるいは皆無のものを好み、「離別萌え」なるものを提唱しつつせっせと生産してきた私にとって、ラブコメと藪の中性癖が共存するということは果てしない衝撃だった。「錦田警部はどろぼうがお好き」は圧倒的にラブコメであり、それでいて二人の手持ちの情報は完璧に不完全で、その不完全さを抱えたまま互いに向き合っている。この語るのにやたら文字数のかかるツボとラブコメが共存しうるなんて考えたこともなかった。この2つは、ここまで完璧なバランスで共存することができるのか!

全ての出会った人や作品や経験は自分の一部になり、自分の思考に影響を及ぼす。志摩事変を皮切りに様々な場面で関係性萌えをこじらせつづけ、自分の性癖の形成はほぼ完成したのではないかなと思っていたが、まだこんなにも衝撃を与えてくれる作品に出会えたことが嬉しい。いまある性癖にぐさぐさに刺さって、それーーーーー!!!!!!!となる作品との出会いは本当に楽しく大切なものだし、自分のときめきの新たな可能性を教えてくれる作品との出会いは本当に貴重で嬉しいものだ。

できれば、叶うなら、私は水族館編が読みたいしもっと警部とアンリくんの関係性にのたうち回りたい……!!!!!!連載再開という夢を抱きつつ、私は布教を続けていく。

 

追記:

うすうす「もしや死んだ目警部はアンリくんがジャックだと気づいているのでは……?」と思いつつもいやいやそんな、それはさすがに私の性癖色眼鏡を通しすぎだろう……そんなことは……と思おうとしていたところ、狂ったようにツイッターで検索していたら「死んだ目警部はアンリ=ジャックだと気づいているよね?」というツイートをちらほら拝見したのですが、やっっっっぱり!?!??!?そうだよね!?!!?!?!!?!?

まっっっっってほんとうにほんとうにむりなんですが……?警部はアンリ=ジャックを知らず、死んだ目警部はアンリ=ジャックに気づいてそのうえで放置しており、警部は死んだ目モードの記憶がなく、アンリくんは死んだ目警部に気づかれていることに気づいていないし死んだ目時代を知ることはないという……そんな……そんなことが……!!!

先に書いた「お互いに空白を抱えた、情報の不均衡さの均衡がとれた関係」というのが、すでに完璧な関係だったのに、更に高次元の更に完璧な関係性になってしまう。

藪の中性癖につながる私の性癖に、何かを隠しているAとそれに気づいているB(Bは本当はAの隠していることに気づいているが気づいていないふりをしており、AはBが気づいたうえで気づいていないふりをしていることに気づきながらなにも知らないふりをしている、そしてBもまた、Aがすべてわかったうえで知らないふりをしていることをわかっている)というものがある。長くて申し訳ないがこれ以上短くすることができない。私はこういう二人がほんっっっっっっっとうに心の底から魂に刻まれたレベルで好きなので、志摩廉造と奥村燐(青の祓魔師)や、赤井秀一と降谷零(名探偵コナン)の関係性にのたうち回り続けているのだが、ここへきてまさかの警部とアンリくんもこの流れに名を連ねることになってしまった。とんでもないことである。出会うべくして私はけいどろに出会ったのだと確信した。ありがとう……ありがとう……!!!!!藪の中性癖にピンときたみんなはきっと同じく藪の中性癖持ちのご友人がいるかと思うので、ぜひその方にけいどろをおすすめしてください。私もおすすめを続けます。